お知らせ

マウスピース矯正装置で治療を受けている患者さんから相談を受ける内容として、「マウスピース装着中の口臭」というのがあります。これについて原因と対策を詳しく解説させていただきます。
なぜマウスピース矯正で口臭が発生するのか
マウスピース矯正による口臭の発生には、明確な医学的根拠があります。それは口腔内環境の変化です。唾液には自浄作用といって、まんべんなく口の中を流れることで、細菌の増殖を抑制する働きを持っています。しかし、マウスピースを装着することでこの作用が低下してしまうのです。マウスピースと歯の間には隙間があり、この部分に唾液が流れず停滞し続けてしまうのです。
先日、治療中の20代女性の患者さんは、「家族に口臭を指摘され、仕事中もまわりの目が気になるようになってしまった」と話されていました。このような悩みは決して珍しいものではありません。
口臭の科学的メカニズム
マウスピース装着中の口臭の発生には、以下の3つの要因が関係しています:
- 唾液分泌の変化
マウスピース装着により、唾液の自然な流れが妨げられます。実際に、装着直後は唾液分泌量が低下するというデータがあります。 - 細菌の増殖
マウスピースと歯の間に形成されるわずかな空間は、細菌の繁殖に適した環境となります。特に就寝中は細菌が増殖しやすく、起床時に口臭を感じやすい状態となります。 - 口腔内の乾燥
装着により口呼吸になりやすく、口腔内が乾燥しやすくなります。朝起きた時の口の中のネバつきが気になるようになります。
口臭に対しての効果的な対策
口臭を減らすためには、以下の対策を実践すると良いです。
- 歯みがきの見直し
朝晩の基本的な歯みがきに加え、昼食後の歯みがきの時間をつくることが大切です。食事後、口をゆすぐだけでマウスピースを装着すると、細菌のかたまりであるプラークが付着します。 - 専用ケア用品の活用
自宅ではマウスピース専用の洗浄剤を使用し、外出先では携帯用の除菌スプレーを使用することで、マウスピース矯正装置を清潔に保つことができます。 - 生活習慣の改善
就寝時の加湿器の使用や、こまめな水分補給により、口腔内の乾燥を防ぎましょう。また、矯正治療中は、一時的にかみ合わせが悪くなるため、消化不良を起こすことがあります。食事の取り方に注意することで内臓から出る口臭を防ぐことができます。
正しいマウスピースの洗浄方法を実践
正しい歯みがき方法があるように、正しいマウスピース洗浄方法もあります。これについて具体的に説明します。まずはマウスピースを外した直後に、ぬるま湯で軽くすすぎます。このとき、マウスピースが変形する可能性がありますので、絶対に熱湯は使用しないようにしましょう。歯ブラシを使用し、歯があたる面を細かく優しくブラッシングします。これは歯と同じように、マウスピースにも歯垢がつくからです。歯垢(プラーク)は細菌のかたまりであり洗うだけでは落ちません。
その後はマウスピース専用の洗浄剤を使用します。市販の入れ歯洗浄剤でも代用できることはあります。マウスピースは再装着しなくてはならないため洗浄剤に漬けおきができません。よって、食事中にメガネ用の超音波洗浄機を使用して10分程度洗浄すると効率が良いです。最後に洗浄剤が残らないよう、十分にすすぎを行い再装着をします。
まとめ
マウスピース矯正治療中の口臭は、患者さんの矯正治療へのモチベーションを下げてしまう内容であり、できる限り早い解決が望ましいです。今回説明したような対策をとることで、事前に予防していくことが可能です。